超複雑化した社会課題の解決にはイノベーション創出が不可欠です。そして地域社会の課題解決のためには、まちという地域レベルでのイノベーション創出が不可欠となっています。そのためこれまで地方創生の取り組みがなされてきました。
しかし実体として多くのまちでイノベーションを起こすことが困難となっており、地方創生は形骸化しています。一方でイノベーション創出を実現したまちも存在しています。この違いに着目し、実際にまちでのイノベーション創出の実践を通じてまとめた方法論が”かせぐまちづくり”です。
そのためのポイントは、まず成長可能な民間事業者に焦点を当てることにあります。地域の社会・経済・文化をけん引し、発展させ得る、成長性のある民間事業者のみを対象にする、ある意味、えこひいきが必要になります。公平性が重視される行政では困難なのですが、民間主導とすることにより対応が可能となります。
次に成長可能な民間事業者に対して、適正に実績の伴った本物のプロ人財が支援を提供することが必要です。同時にプロ人財に対して適正な報酬が支払うことが重要です。これにより当該の民間事業者単体では解決困難な課題を最短距離で解決に導くことが可能になるからです。
また金融機能による信用の支援も不可欠です。金融機能とは銀行などの金融機関の他、助成金を提供する自治体などの行政機関も対象になります。金融機能は地域経済の基盤であり、資金提供だけでなく、民間事業者同士を紹介する機能も果たすことになります。
これら民間事業者、プロ人財、金融機能がそろうことで民間事業は安定し、地域経済も安定します。ここにさらなる一手として、三者がそれぞれの強みを活かし、相互補完することが必要になります。
これにより当該の民間事業者が提供する商品・サービスの質と量を高めることが可能になります。それは利用するまちの人びとの生活の質を向上させ、社会課題を解決することにつながります。バリアフリー対応などを促進して、より多くの社会参画を促し、事業機会の拡大につながり、当該の民間事業者を成長させ、雇用機会の拡大・所得向上にもつながり得るのです。
さらに固有の成長性ある民間事業者に焦点を絞った取り組みはすぐに周囲に波及します。報道などにより商店街の特定の店舗が特集され行列ができるようになると、周辺にも利用客が流れて消費活動を行うようになり、当該の民間事業者の成長に合わせてまちの他の民間事業者の成長機会につながるのです。
すると行政などの関係各所が“活性化したまち”としてブランド発信し、まちに行政や企業などの視察を呼び込むことになります。この視察が起点となり、交流が始まり、観光に発展し、物流に発展し、成長可能な民間事業者を中心にさらに全体へ大きく全体波及することにつながっていくのです。
これらの流れを意図して創り出していく、まちで実践するオープン・イノベーションの方法論が”かせぐまちづくり”なのです。なお、実践においてはコンダクターシップが不可欠となります。なぜなら本来考え方も背景も違う人たちがチームになることが必須なのですから。